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2017/11/07

ボスの映画が公開されます。

「謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス」という映画が
12月に渋谷のシアター・イメージフォーラムにて公開されます。
ボスと言えば、レオナルド・ダ・ヴィンチと同年代に
北方ルネサンスの地、フランドル地方で活躍した画家です。
昨年がちょうど没後500年です。
こちらで予告編が見られます。
bosch-movie.com
映画:謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス
eiga.com/news/20171011/17/1/01/
公開に先立って見せていただきましたが、
ボスの『快楽の園』の細部をゆっくり、
大きな画面で見たい方にはおすすめです。
たくさんの部分が丁寧に映し出されています。
その奇抜な想像力は圧巻です。
映画として面白いかどうかというより、
ただただ、作家、アーティスト、音楽家…など
様々な立場の方々が画家ボス、あるいは『快楽の園』について
思い思いのことを語っているので、
この難解な絵を見るにあたってのヒントがいろいろありました。
そういう意味で
ボスに全く興味や関心がない方にはちょっと単調かな?
とも思います。
私が興味を持ったのは、この作品の元の題名が、
『多様な世界』あるいは『いちごの絵』だったということです。笑
こんな題名だったら、みんなが目を凝らしていたでしょうか。笑
考えてみれば『快楽の園』という題名が、
この作品をさらに興味深く、凄い物にしていたのですね。
私はこの作品をプラド美術館で見たことがありますが、
あまりの細かさにびっくり!
ブリューゲルもそうですが、北方の画家たちは
もの凄く目がいいんだと思わずにはいられませんでした。
今で言えば極細のボールペン並みの細く繊細な線。
それを筆で描いていたのですから、
もはや執念ですよね。笑
結城昌子

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2017/10/25

「小学館あ〜とぶっくシリーズ」が中国で。

すでに、このシリーズは
中国語(繁体字)に翻訳され台湾で出版されています。
今年、中国(大陸)の出版社から日本の出版社を通して
オファーをいただき、翻訳出版されることになりました。
残念ながら、まだ<簡体字>でのかき文字の
仕上がりは見ていないのですが。笑
ご存知のようにこのシリーズは、
名画や画家の美術史的解説の本ではありません。
私が個人的に感動したことを創作的に構成し直し、
子どもたちのために小さな物語にしたものです。
ゴッホの、<うずまきぐるぐる> とか、
ピカソの、<あっち向いてホイッ!> とかは、
中国ではどういう表現になるのでしょうか。
伝わるのでしょうか。
正直、ちょっとドキドキしています。
結城昌子

中国語版アートブック

スーラの絵本
台湾版の『スーラの絵本』です。

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2017/10/21

『名画ここどこ』の活用法

親しい方からこんなお話をいただきました。
「母が入院することになり、『名画ここどこ』をプレゼントしました。
ベッドの上でも遊べて、ボケ防止にも繋がってくれたらと思って
持っていくと、早速ページをめくりはじめました。絵を見て微笑む
母を見るのは久しぶりでした。」
嬉しかったので、
文面を紹介させていただきました。
そうなんですね。
子ども向けのトイが高齢者にもぴったりという話は
最近テレビなどでよく見かけます。
アート好きとか、そうでないとかに関わらず
部分探しは脳の活性に繋がるようです。
そういえば笑い話のような話ですが
うちのスタッフのひとりは、母親用と思って偶然購入した、
おそらくキッズ用の「まちがい絵探し」という冊子を自分で
ベッドサイドに置いて、毎日やっているうちに
なんとなくクセになったようで
「これが案外むずかしくて…」なんて笑っています。
(おいおい、文字や図形をふだんおいかけているキミが
そんなことでどうする!)
いい絵は時に絶大な力を発揮してくれます。
遊びながらその力を実感してほしいです。
お見舞いなど、ご高齢の方にもご活用いただければ、
作者としてはこの上ない喜びです。
Kさん、ありがとうございました。
名画ここどこ: 小学館あーと知育ぶっく
< 結城昌子

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2017/10/13

ゴーギャンは嘘つきだったのです。タヒチ編1

私がタヒチに行ったのは、
ゴーギャンのこんな言葉があったからでした。
……あたりは漆黒に包まれ、物音ひとつしない。
枯れ葉の落ちるわずかな音さえはっきり聞こえるほどの、
静けさにつつまれる夜……。たしかそんな内容でした。
そんな静けさに満ちた夜って?
枯れ葉の落ちる音が聞こえるほどって?
そこを精霊たちが音もなく通り過ぎるなんて
考えただけで行きたくて行きたくて…、で行ってしまったというわけ。
もう10年も前のことですが。
思いのほか湿った空気に混じって
海の匂いと、土の匂いと、花の匂いと、熟れた果実の匂いがまざって、
とても濃密な香りがしたことが忘れられません。
これが、ゴーギャンが「かぐわしき大地」と語った
タヒチなのだという実感に胸が熱くなったことを思い出します。

タヒチ 水上コテージ

タヒチの代名詞、水上コテージです。
実は、私の泊まったコテージは
ハネムナーに人気のある水上コテージとは別の、
少しだけ割安のビーチコテージ。
こちらは、木立のなかにあって、目の前は海で、
「かくわしい大地」を望む滞在者にはピッタリ。
水上コテージはひとりで泊まるには、
あまりにロマンティックすぎるというものです。(笑)
凄いのは、夕暮れ。
神々の儀式のように荘厳な日没が
毎日繰り返されるのだからたまりません。
<私は何者なのか?どこから来て、どこに行くのか?> って
ゴーギャンの絵の題名みたいなことを本気で思ったりしました。(笑)
ゴーギャン『我々はどこから来たのか、 我々は何者なのか、我々はどこへ行くのか』
ゴーギャンの『我々はどこから来たのか、
我々は何者なのか、我々はどこへ行くのか』です。
完全にゴーギャンの残した言葉を信頼していた私ですが、
とうとう、もうひとつのタヒチと出会ってしまったのでした。
なにもしない長すぎる時間に
たっぷりすぎる昼寝が災いして、
その日はなかなか眠れなかったのです。
実は、それまでの夜は疲れていたのか、バタンキュー! で
全く夜を味わえないでいたのです。
だから、夜の静けさを味わうのには絶好の日になる予定でした。
ところが、なんです。
シーツに潜って、全身を聴覚にして耳を澄ますと……、
砂浜に打ち寄せる波のタッポンタッポンに混じって、
遠く外洋から、うなり声のようなゴーゴーの音が
地響きのように聞こえてきて、
あたりの木々のザワザワも半端じゃない。
鳥はバタバタ、こともあろうに
パンダナスの葉をふいて作られた私のコテージの
屋根の上でなにやらギーギーカッカッと大騒ぎを始めるではないですか。
えっ、これが静けさに満ちた夜なの?

思わず枕に耳をふさいだら、
今度は床下からカサコソ。
カニが穴を掘っているらしい。カサコソカサコソ。
おまけにどこから舞い込んだのか虫がプ〜ン。

「うるさ〜い!!」
自然はこんなにもうるさいものだったのです。
もしかしたらそれは、ちょっとした風の機嫌で、
海が荒れ、山がざわめき、生き物たちが動き始めただけの
ことかも知れないけれど、
私ははじめて本当の意味で野生と出会った気がして嬉しかった反面、
ゴーギャンが嘘つきだと確信してしまったというわけ。
でも、嘘つきでいてくれると、ちょっと救われます。
ゴーギャンは晩年、
「パンと水しか口にしていない。金を送ってくれ!」
って、何度も悲痛な手紙を本国に書いていたけれど、
もしかしたらそれも嘘だったかも。
お金を無心する時に、
楽しく優雅に暮らしてます
とは普通は言わないと思うから。
思い出してみれば、パイナップルも、
マンゴーも道に転がっていたじゃないか。(笑)
結城昌子

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2017/10/13

愛知県版 中日新聞に

「ランス美術館展」に関するコラムを書きました。
この企画展は現在名古屋で開催中です。
今回来ているいろいろな作品の中から、
私が選んで書いたのはゴーギャン。
中日新聞 ゴーギャン
クリックすると大きくなります。
この彫像を見ると、どうしてもゴーギャンを思いながら
タヒチで過ごした旅の日々のことを
思い出してしまいます。
タヒチには本当にゴーギャンが「ノアノア」の中で
書いたような、精霊みたいな存在がいて…。
結城昌子

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