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2013/05/27

サライ 芦屋釜

月日の経つのは早い。社会の変化も早い。
じっくり腰をおちつけた歩みそのものが難しいと思っていた矢先、
福岡県の小さな町で素敵な文化復興プロジェクトに出会った。
今年1月のことだ。
88年〜89年、時の竹下内閣が「ふるさと創成資金」と銘打って
各町に一億円を配った。
バブル期らしい、今となれば耳を疑いたくなるような政策だけれど
ここ芦屋町は目先の派手さよりも将来につながることを
考えた(のだと思う)。役場が偉かったのか、
町の人々の志が高かったのか。。とにかく
江戸初期に途絶えた地元の名品「芦屋釜」(茶道の茶釜)の
復興を志した。
ところがプロジェクトは予想外に難航した。
さまざまな壁を乗り越え、プロジェクト開始から十数年
ついに今春、見事な芦屋釜を作り出す一人の芦屋鋳物師が誕生した。
技を間近で見させていただいた私は
それをサライの連載の今号に短い文章で書かせていただいた。
店頭に並ぶや、多くの方々から静かな激励の言葉が届いた。
いや。。これらのあたたかな言葉は
芦屋釜復興を支えた若いスタッフの皆さんにこそふさわしい。
「日本美術の技」の連載は続きます。
人知れずリレーされていくこんな素敵なプロジェクトを求めて。。
もしそのようなお話がお近くにあれば、ぜひお聞かせください。
よろしくお願いします。
結城昌子
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comments (4)

コメント

  1. 結城昌子 より:

    メイプルさま
    お元気ですか?
    すっかり返信が遅れてしまいました。(遅過ぎ!)
    本当に絵絹に限らず、日本の貴重な技はだんだんと失われてしまうんではないかと心が痛みます。
    実際にもう無くなってしまった技もいくつか知りました。なんとか頑張ってほしいですが、それにはその良さを理解して盛り上げていく人たちが、たくさんたくさんいなくてはならないですよね。
    手織りの絵絹が一軒弐なってしまったと知って、私もショックでした。

  2. メイプル より:

    サライ8月号『絵絹』について書かれた結城さんの文を読み、「国宝級文化財修復に使われる絵絹を手織りする工房はたった一軒になってしまった」ことに驚くと同時に、支持体としての絵絹の素晴らしさにも、あらためて気づかされました。

  3. 結城昌子 より:

    M.Iさま
    ほんと、何年もひとつもできなかった芦屋釜。
    それを気長に見守る待ちの人々がいた訳ですね。
    なんだか私たちの毎日は、結果を急ぎすぎますよね。

  4. M.I より:

    まさに「米百俵」の話を連想させますね。現代にもこういう志をもって生きている人々がいるって嬉しいですね。

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